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ソフトバンクの社内起業から世界へ。 “食”の可能性を拓くumamill代表の思い

ソフトバンクには社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」があります。

その制度を活用し、佐藤 晶洋は日本と世界を“食”でつなぐサービスを展開するumamill株式会社を立ち上げました。
新卒で商社に入社後、ソフトバンクの法人営業を経て、ベンチャー経営者へ。現在は、世界を見据えたビジネスに挑んでいます。
 

ソフトバンクで食品輸出?社内起業で生まれたumamillという可能性

2013年、ユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録されました。

栄養バランスの高さ、素材を生かした調理法、そして、種類豊かな食材。

和食とともに、日本が誇る食品にも世界の注目が高まっています。
しかし、実際に食品を海外に輸出するのは「ハードルが高い」と語るのは、umamillの代表取締役CEO の佐藤 晶洋です。


佐藤 「食品の輸出入には、各国が定める細かな規制をクリアしなくてはいけません。 
例えば、日本からシンガポールに肉を輸出する際は、流通過程でいっさい人の手に触れてはいけない。
また、発がん性物質の管理基準により、EUにはかつお節を持ち込むことができません」


海外でも気軽に日本の食品を手に入れたい。言語の壁や規制の調査などのハードルにとらわれず食品を輸出したい。

そんなニーズに応えるプラットフォームとして産声をあげたのが、umamillでした。

佐藤は、新卒で商社に入社し、その後ソフトバンクへ転職。
法人営業担当として活躍する傍ら、ソフトバンクの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」を利用し、この会社を設立しました。

海外で日本の食品を探す「バイヤー」と、日本の「食品メーカー」をつなぐ新サービス「umamill」。

しかし、その立ち上げは苦難の連続でした。


佐藤 「新たなビジネスが最初からうまくいくわけもなく、プロジェクトの開始から現在までに、大幅な方向展開を何度も行ってきました。

当初は考えの甘さもありました。
親会社の役員陣へのプレゼンでこてんぱんにされ、『3カ月後までに事業モデルを具体化できなければ、プロジェクトは打ち切る』と宣言されたこともありました。

立ち上げ当時は法人営業の課長職と並行してプロジェクトを行っていたので、時間的、体力的には大変でしたね。
仕事の合間を縫って考えぬき、海外出張に行ったり、想定されるユーザーにヒアリングしたりしながら、なんとか現在の事業モデルにたどりつきました」


試行錯誤の果てに、誕生のチャンスを授かったumamill。

無料サンプル品の取り寄せから商談や仕入れまでをワンストップで行えるなど、従来の食品輸出入のハードルをクリアすることで、日本と世界を結ぶ役割を果たすのが命題です。

その背景には、佐藤自身のある経験が生かされていました。

内定取り消しからの商社勤務。商売の本質を学ぶ日々と成長への危機感

佐藤は、アメリカ人の父と日本人の母を持ち、日本とアメリカで生まれ育ちました。

しかし、幼い頃からその胸には「父のように、自分の生まれ育った国を出ても生きていける人間になりたい」との思いがあったそうです。


佐藤 「一時期、アメリカの高校に通っていたのですが、それは改めて『自分は日本人なんだ』と実感する機会になりました。
アメリカと日本のハーフですし、海外への志向はありましたが、自分は日本やその文化が大好きだと感じたんです。
どちらかというとアイデンティティは日本にあるんだな、と」


就職活動では海外で働ける仕事を探し、内定を獲得。

ところが2008年秋、リーマンショックによって世界経済は激変します。

企業は景況の悪化から人材採用が難しくなり、佐藤も内定取り消しという憂き目に遭い、再度就職活動をすることになりました。 


佐藤 「時期的にも当時の経済状況的にも、新卒採用を行っている企業なんてほとんどなくて。
とにかく選考を受けられる企業を片っ端から探していって、幸いにも商社に入社が決まりました」


海外事業に携わることや起業を志しながらも、入社して配属された先は商社の中のドメスティックな部門。

それでも「とにかく生きていくために必死だったから」と語る佐藤の言葉からも、当時の状況がいかに厳しいものだったのかがうかがえます。

しかし、この企業での経験は、佐藤にとって大きなインパクトをもたらしました。


佐藤 「最も大きな出会いは、入社後に自分を指導してくださった上司との出会いです。
その上司に、仕事の基本を叩きこんでもらいました。

理論に偏ったマーケティングの知識だけでなく、お客さまと向き合い、いかに商売を考えるか。
厳しくも、手取り足取り指導していただきました」


人間関係や環境にも恵まれ、力を伸ばしていった佐藤。
2年目からは、数億円単位の金額が動く大規模案件を任せてもらえるようにもなったそうです。

しかし、営業成績で1位を獲得できるようになってきたことから、徐々に成長の実感が薄まるのを感じるようになっていきました。

自分をもっと成長させたい。成長できる環境で働きたい──。

そんな決意が、佐藤を新たな環境に導くことになるのです。

ソフトバンクで出会った新たな可能性。新規事業を立ち上げて経営者に

2012年、佐藤は法人営業担当としてソフトバンクに入社しました。

「入社を決めた理由は?」という問いに、佐藤は「成長できる環境があるという自分の希望にフィットした会社だと思ったから」と答えます。


佐藤 「正直、事業の実態がよく分からない会社だなという印象だったのですが、『情報革命で人々を幸せに』という経営理念に、すごく共感したんです」 


法人向けに固定回線やモバイル回線の販売の営業を行うことになった佐藤。

しかし、入社した初月は全く実績を残せませんでした。


佐藤 「営業成績がひどすぎて、箸にも棒にも掛からない状態でした。
このままじゃダメだと思い直し、翌月からはアプローチ方法を転換。

端的に言うと、アプローチ先を経営者に絞ったんです。

商社勤務の頃から経営者と商談する機会が多かったので、現場目線で契約を少しずつ積み上げていくよりもトップを押さえる方がいいなと思ったんですよね。
あとは、テレアポとメール送信もとにかく数を打って、お客さまとのタッチポイントを増やすという量的な戦術も同時に行いました。

その結果、ちゃんと売上を伸ばせるようになり、数カ月後には係長に、翌年には課長のポジションを任せていただけるようになりました」


本業で成果を出していく中で、佐藤はある社内制度を知ることになります。

それが、社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」です。

現在、佐藤が代表取締役CEOを務めるumamillは、「ソフトバンクイノベンチャー」制度によって設立されたOpenStreet社の横井 晃氏がもともと立案したものでした。
彼に誘われ、佐藤も新規プロジェクトにジョインしました。


佐藤 「経営理念への共感から、いつかは『情報革命』につながる事業の立ち上げに挑戦したいとの思いがありました。
通常業務と並行してプロジェクトを推進していったのですが、商社時代の経験とは異なり、桁違いの知見や判断力が求められると、すぐに実感しました。

例えば、自ら事業計画を立案して資金調達をする必要があり、経営者目線を持って仕事をすることと、経営者になることは全く別物。

あらゆる面で生じるコストや、それをペイする方法を当事者として考え続けるのが、経営者なんだと痛感する日々です」


umamillという会社を立ち上げ、事業を展開する全責任を負う立場となった佐藤。

今こそまさしく、否応なしに成長を求められ、そして成長し続けていく環境に立っていると言えるでしょう。

信頼を強みに、umamillが世界をつなぐ。経営者の覚悟が前進の力

社内起業制度とは、一般的な起業とどのように異なるのか?
実体験を元に佐藤は次のように語ります。


佐藤 「最も大きなメリットは、やはりソフトバンクのバックボーンがあることです。
どんな事業も、キャッシュがなければ存続できません。
資金調達先となるSBイノベンチャー株式会社はソフトバンクの子会社であり、相談できる環境が身近にあるのはありがたいことです。

また、いわゆるスタートアップの場合、企業の認知や信頼がない状態から事業を始めなければなりません。
そのハードルは決して低いものではない。
その点、umamillはどんな局面でもソフトバンクの信頼のもとに話を進められるので、アドバンテージがあります。

さらに、ソフトバンク内で案件を紹介してもらえることもあります。
例えば、ソフトバンクの地方創生を手掛ける部署との連携が実際に始まっています。
限られたリソースで事業を推進する上で、グループ内のリソースを活用できるメリットはかなり大きいです」


もちろん、ソフトバンクのグループ会社である以上、コンプライアンスなどの方針にも一定の決まりがあります。

一般的なスタートアップと比較すれば、ある種の制約とも言えますが、チャレンジの環境としてはかなり充実していると佐藤は語ります。

そして、佐藤の目は今、さらに広い世界を、そしてさらに先の未来を見つめています。


佐藤 「生活者の視点から見るとまだまだ“ソフトバンク=携帯電話のキャリア“という認識の方も多いですね。

しかし、実際にはもっと幅広いサービスや商材を扱っている企業です。

最先端のテクノロジーに触れる機会が多く、知識も経験もどんどんアップデートされていく。
世界の最先端の時流を肌感覚で身につけられて、そこからビジネスに落とし込む力を養えるのは、ソフトバンクならではの良さではないかと思います」


umamillのトップとしても、佐藤の思いや熱意はぶれません。 


佐藤 「やりたいことは、あふれるほどあります。
現在の事業フェーズでできること、できないことはもちろんあるものの、中長期的な目線を持って前進し続けていきたいですね。

umamillの事業を通して、日本の食品メーカーや世界のバイヤーの皆さんが新たなチャンスを得られる。

提携している自治体やパートナー、umamillを信頼してくれているユーザーを絶対に裏切ることなく、事業を伸ばし続けていくんだという覚悟を持って、事業運営、そして企業経営に臨んでいます」


日本の良さを世界に発信したいという思い。
商社での経験、法人営業としての経験。

これまでの軌跡が点から線となり、佐藤の、そしてumamillの未来は、これからも色鮮やかに描かれていくのです。


※2020年5月29日時点の情報です
 
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